《芽吹きの種》

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さわさわ・・・ 優しい風が吹き抜ける。 心地良い陽射しが降り注ぎ、その眩しさに目を細めた。 「もうすぐ・・・お城だね。」 歩みを進める毎に、ぼんやりとした影が次第にはっきりしてくる。 「嬉しそうだな、市。」 隣を歩く長政さまがそう言ったから素直に頷いた。 「うん。備前さまや市さまに会うのが楽しみ。長政さまは?」 「そうだな・・・私も楽しみだ。さて、のんびり歩くのもいいが、人を待たせるのは悪だ。少し急ぐとしよう。」 少しだけ速くなる歩調。 でも、ちゃんと市の歩幅に合わせてくれる。 その気遣いに小さく笑みが零れた。 「市、何を笑ってる?」 「ううん、何でもないの。」 足取りがいつもより軽い。 心がじんわりあったかい。 “幸せ”だと感じるの。 .
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