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「世界が……始まる」
それが、娘の言葉だった。
小学校に上がった娘は、周りからも母親から見ても何を考えてるのか分からなかった。
魔女養成所に通うような母親の子だと自分で問い掛けながら、めい一杯の愛情を注いだ。
時々、娘はどこかを見て笑う。
それが、不気味に思った反面、母親は好奇心に擽られた。
我が子が普通ではないのだと、普通ならば考えることないことを考えていた。
「何が始まるの?」
問い掛けてみたが、娘は反応しなかった。
それどころか、縁側に座布団を二組敷いて目を閉じていた。
母親でさえ、座禅を組むのに時間を要したのに。
娘は、すぐに始めていた。
「誰か来ていたの?」
空席だったそこは、触ると誰かが座っていた痕跡を残していた。
変な寒気と鳥肌。
自然と笑いが込み上げるのを感じた。
ああ、娘は神に選ばれたのだ。
その悦びに浸っていた。
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