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笑い声の響く部屋では、あの、仏頂面の与一が 陽平の変顔に 笑いこけていた…
『ハハッ…よ、よ、陽平殿、お止めくだされ(笑)ハハッハハハ……』
『陽平?何してるん?』
『いいところに戻られた!香殿、陽平殿を止めてくだされ(笑)』
『与一さん、参ったって言わんと 続けるでぇ~』
香は ふと思い出す…そういえば、バイト時代に笑顔の出ない新人に 陽平はよく変顔をして 笑わしてたなぁと…
しまいには、松も笑い出し、香もつい吹き出してしまっていた…
『プッ……もう、ええやん(笑)』
『ま、参りましたッ…ハハッ ハァ~~。』
『しゃーないなぁ、俺の勝ちや(笑)なぁ、与一さん。こんだけ笑ったら 俺と与一さんの距離は 近くなった気がせぇへんか? 渋い顔で睨まれとったら 俺らかて心開かれへんし。』
陽平が、与一に右手を差し出している。その手を与一は取ったのだった。
香が、誇らしげに陽平を見ている。
『あんたぁ!成長したなぁ~えらいやん!!』
陽平の頭をワシャワシャと撫でる香。香から、リンスのいい匂いが鼻についた。
『あれ、風呂やったん?いいなぁ~俺も 入っていいですか? 』
『陽平殿、ご一緒してよろしいか?』
『ほな、男同士入りましょうか!』
二人、何やら楽しげに部屋を出ていった。
二人の後ろ姿を 見つめる松が、目を細めていた。
『与一さんのあんな顔、初めて見ました。』
『あれが、陽平のいいところなんよ。しばらく、お世話になると思うけど、よろしくね。』
先ほどまで怯えていた松が、笑顔で 香を見上げ頷いたのだった。
外は既に 薄暗く、松が明かりをお持ちしますと部屋を後にする。そして、庭から聞こえる 虫の音が不安を軽減していった。
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