報告書1:七不思議について

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  そんな満は、非常勤の声を子守歌にしてぐっすり眠っていた。 満も、最初は襲ってくる眠気と必死で戦っており、非常勤が達筆に書いていく板書を、ミミズが這(は)ったような字で必死に書き写していた。 しかし、抵抗も虚しく、満は安らかに眠りの世界へと旅立っていった。 眠っている満の背中は規則正しく上下しており、今も安らかに眠っていることが一目で判る。 他の生徒も同様で、なんとか起きている生徒は、他事、所謂(いわゆる)、内職に精を出していた。 それでも非常勤の声は容赦(ようしゃ)なく生徒達を眠りの世界に連れて行く。 気付けば、ほぼ全員が机に突っ伏して寝ていた。 その寝顔はとても安らか。 とても、授業中に居眠りをしているときの寝顔とは思えない。 そんな壮絶な光景が目の前に広がっているというのに、講師は全く気付いていない。 1人で本文を読み上げ、1人で現代語訳し、1人で説明し、1人で納得する。 そして、授業が終わりにさしかかってきたところで、ようやく1人の男子生徒が現実世界へと戻ってきた。 それは、彼だけではなかった。 他の生徒も目覚まし時計をかけてあるかのように、ほぼ同じタイミングで目を覚ましていき、終業を告げるチャイムが鳴る1分前には、全員が目を覚ましていた。  
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