報告書1:七不思議について

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  そのため、券売機の前にはいつも長い列ができてしまうのだ。 「券売機をもう一台買えばいいのに」 と思うのだが、 「まあ、並んでいる間にメニューを選んでおけれるし、いいか」 とも思ってしまう。 そして、その思いが功を奏しているからなのかは定かではないが、皆、券売機の前に到達するとすぐに食券を購入するため、列はスムーズに消化されていく。 が── 「満、早く決めろよ」 「うーん」 ここに例外がいた。 券売機を前に「でもなー」やら「うあー」やらぶつぶつと呟く満。 若干、後ろに並ぶ人達がイライラし始めた。 「並んでいる間に決めておかなかったのか?」 後ろに並ぶ人達の空気を察した孝之が訊ねた。 「いや、決めてたんだけどさー、いざ、券売機を前にしたら──」 ──迷っちゃった ということらしい。 何と何で迷っているのかをさらに訊ねてみると、 「おろしハンバーグにしようか、デミグラスハンバーグにしようかでねー」 うーんと唸(うな)り声をあげる満。 ──早くしねえと、後ろのやつめっちゃイライラしてんぞ? と、いう訳で 「うりゃっ!」 「あーっ!」 孝之がおろしハンバーグとデミグラスハンバーグのボタンを両方押した。  
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