4人が本棚に入れています
本棚に追加
そのため、券売機の前にはいつも長い列ができてしまうのだ。
「券売機をもう一台買えばいいのに」
と思うのだが、
「まあ、並んでいる間にメニューを選んでおけれるし、いいか」
とも思ってしまう。
そして、その思いが功を奏しているからなのかは定かではないが、皆、券売機の前に到達するとすぐに食券を購入するため、列はスムーズに消化されていく。
が──
「満、早く決めろよ」
「うーん」
ここに例外がいた。
券売機を前に「でもなー」やら「うあー」やらぶつぶつと呟く満。
若干、後ろに並ぶ人達がイライラし始めた。
「並んでいる間に決めておかなかったのか?」
後ろに並ぶ人達の空気を察した孝之が訊ねた。
「いや、決めてたんだけどさー、いざ、券売機を前にしたら──」
──迷っちゃった
ということらしい。
何と何で迷っているのかをさらに訊ねてみると、
「おろしハンバーグにしようか、デミグラスハンバーグにしようかでねー」
うーんと唸(うな)り声をあげる満。
──早くしねえと、後ろのやつめっちゃイライラしてんぞ?
と、いう訳で
「うりゃっ!」
「あーっ!」
孝之がおろしハンバーグとデミグラスハンバーグのボタンを両方押した。
最初のコメントを投稿しよう!