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1つ、興味深(おもしろ)い話をしよう。
人間は古(いにしえ)より、幽霊やお化け、妖怪といった類(たぐい)のものを恐れていた。
それら1つ1つに名を付け、言い広め、そして恐れ合う。
しかし、それらを生み出したのは、他でもない人間だ。
否、正確に言えば、人間の心だ。
ある時は、誰かを怖がらせたいというイタズラ心から。
またある時は、誰かに何かを伝えたいと思った人の心から。
理由は様々だが、突然、あるいは必然的にそれらは生み出され、そして消えていく。
現に、化け狐やろくろ首、夜の平安京を闊歩(かっぽ)していたという百鬼などは消滅してしまっている。
何故、彼らは消えたのか?
それは、その当時生きていた人々が最も恐れていたもの──闇が、消滅したからだ。
昔は行灯(あんどん)や蝋燭(ろうそく)が、唯一闇を照らし出すものだった。
しかし、闇を照らすとは言っても、それらの光は弱く、むしろ恐怖心さえ煽(あお)る。
それ故、昔の人々は、闇を恐れる心からお化けや妖怪を生み出した。
が、現在は科学技術の発達により、人は電気を作り、使う手段を手に入れた。
つまり、人が闇を恐れる必要はなくなったのだ。
それにも関わらず、何故現代においても、まだ妖怪達はこの世で生きているのだろうか?
それは──
人間の心の中に、闇が残っているからだ。
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