没 第一章

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  「満、どうかした?」 いつまでも何も言わずにぼーっとしている満を心配し、千広が声をかけた。 「ううん、なんでもないよ。ちょっと考え事してただけ。」 「そう?ならいいけど。」 千広は、満が何について考えいたのか判っているはずだが、それについて何も訊こうとはしなかった。 「さ、帰ろう。今日もたんまり宿題出たし。」 「本当だよー。あり得ないよね。何で数Ⅰと数Aの両方ともあんなに宿題出すかなー。」 満ははあとため息をついた。 「しかも満、数Ⅰの宿題で板書あたってなかった?」 「うん、あたってるよ。どうしよう、判んなかったら。」 「そのときは俺か孝之にでもメールすればいいんじゃない?」 「そうだね。いいよなー、2人とも数学できて。」 「俺も孝之も理系に進む予定だからね。」 「え、もう文理選択のこと考えてるの?」 満は目を丸くした。 「うん。こういうことはなるべく早い方がいいでしょ。」 「そっかー。僕、まだ何も考えてなかったなー。」 「心配しなくても満は文系に向いてるよ。古典とか歴史得意でしょ?」
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