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「何でなのよ…‥。」
彼女がその場に泣き崩れると──
『許セナイヨネエ?』
「!」
どこからか、変な声がした。
その声は、ヘリウムガスを吸ったかのようにとても甲高く、奇妙で不気味な声だった。
彼女は不安と恐怖を感じ、蛇口から水が出しっぱなしになることを気にせずに立ち上がって辺りを見回した。
しかし、今は授業中で、時より廊下から教師の声は聞こえてくるが、トイレ内には誰かがいる気配なんてしないし、物音さえしない。
それでも、声は鳴る。
『許セナイヨネ?』
再び聞こえたその声は、耳障りなはずなのに、心にはとても心地が良かった。
そして、彼女の唇が、何かに操られているかのように不気味な声の言葉をなぞる。
「許せない。」
『許セナイ。』
「許せない。」
『許セナイ。』
「許せない。」
『「許セなイっ!」』
気付けば、2つの声はユニゾンしていた。
そして、心の奥からすっと重りのようなものが消え、心が軽やかになるのを感じた後、彼女はその場に倒れた。
そんな彼女の頭上では、彼女には見えなかった黒い霧状の何かが、黄色い目と赤い口を不気味に曲げ、ニヤリと笑った。
その頃、無人の社会科教室では、銀縁眼鏡が愛用しているノートパソコンが、ピーピー!と甲高く警戒音を出していた。
その画面には赤い文字でこう書かれていた。
"He comes out!"
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