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結成、雛百合会
「はぁ…」
月曜日。俺は憂鬱な面持ちで学院へと続く石畳を歩いている。
悩みの種は勿論昨夜水崎お姉様に自分の気持ちを言ってしまった事な訳だけど。
それ以外あるわけがない。
あるとしたら男に戻れないことくらいかな。
「…はぁ」
周りの皆さんは悩みも無いかのように明るく挨拶を交わしてる。今はそれがどれだけ羨ましいことか。
俺も悩みなく挨拶を交わしたい。
「ご機嫌よう、夕紀。元気がないわね」
「あ、夕紀ちゃん」
「ご…ご機嫌よう…」
悩みの種とその妹香織お姉様襲来。正直気が滅入る。
「どうだった、クローゼットの中。私久し振りに頑張っちゃったよ」
屈託無い笑顔で話しかけてくれる香織お姉様に良心がかなりのスピードで削られていくのを感じる。
水崎お姉様はというとそんな香織お姉様を優しい笑顔で見守っていた。
こうして見れば普通の人何だけど、腹の底じゃ何を考えているか分からない人だ。この人が近くにいるときは一時たりとも気を抜かずにいこう。
「香織、夕紀ったら愕然としていたのよ。あの顔を見せてあげたかったわ」
「えー可愛いのにー」
「あはは…私の元の性格を考慮した上でお話していらっしゃいますか?」
「あ、そっか。夕紀ちゃんはクールプリチーだったよね」
いや、格好いいのか可愛いのかどっちかにしてくれ。
「やっぱりシマウマがよかったかなあ…」
飾りの種類云々以前に俺はラックだけで十分過ぎるくらいお洒落だと思うんだけど、こういった感性はよく理解できん。
というか、何で昨日は香織お姉様じゃなくて水崎お姉様が来たんだよ。そう言うことは自分で伝えるべきだろう。
…そうすればあんな弱味を握られるような事はなかったのに。
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