バスに揺られて

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「なぁなぁ、河内」 と、宮瀬。 河内は「ん?」と振り返る。 「おまえんちの弟、宮ノ塚なんだろ?」 「あー、うん」 「俺んちの弟も宮ノ塚行くことになってさー、制服のことだけど、譲れられそうにない」 すまん、と申し訳なさそうに言う宮瀬。 「あ、俺も無理。イトコから頼まれててさ」 と、速水。 ……なんか、みんな弟とかイトコに譲れるやつがいるんだな。 俺の場合は親戚に宮ノ塚行くやつなんていないし、兄弟つったら、妹だけだし…… ……って、何考えてんの?俺。 「松本は?」 と、河内に聞かれ、俺は迷った。 どうせ、譲るやつなんていないんだし、「譲るよ!」と即答えればいものの、なぜか答えれなかった。 『1番ホームより――…』 「あ、バス来たみたいだな」 と、立ち上がり、荷物を抱える河内。 「さて、行きますか」と言う宮瀬の言葉で、俺たちは席を立ち上がり、荷物を抱えてバスへ向かった。 ……なんで、譲るって言えばいいことなのに、俺は迷ったんだろうか?
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