【誕生】

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9月も半ばに入り陣痛が始まった とにかくダイちゃんのご両親と私の両親に連絡をして裕美ちゃんに付き添って貰った 裕美『恵理さん頑張ってや』 恵理『うん、ありがとう、やっぱり不安…怖い…』 裕美『そやなぁ…私もそうやったし けど意外と出る時は直ぐやで、陣痛が来て出るまでが長いねん』 恵理『嫌だ出るなんて…』 裕美『あはは…育ちがバレるし』 恵理『裕美ちゃんいつもごめんね何から何まで…ありがとう』 裕美『かまへんし、内の子とタメやな』 恵理『タメって…』 裕美『なんや今日は口開かんとくは、ボロ出過ぎやし』 裕美ちゃんが明るく振る舞ってくれた 不安な私を気遣ってくれていた 陣痛の間隔が狭くなり病室から分娩室へ 丁度私の両親も駆けつけてくれていた いよいよ… 間隔が狭まる陣痛 徐々に早くなる底から突き上げてくる鈍痛と呼吸が苦しくなる不安が交差して気を失いそうになる ダイちゃんを呼んでいた 何度も何度もダイちゃんを呼んでいた 産声と共に痛みの頂点から抜け出した 看護師さんが預けてくれる 宝物を抱く 男の子だった ほっぺをつんつんする 仕切りに手を動かしている 時折目を開ける ダイちゃんにそっくりだった 宝物は乳児室に移されて暫くはおっぱいをあげる時にしか抱っこできない 特に何の問題もなく元気な宝物だった 病室に移り点滴を打つ 入れ替わり立ち替わり宝物の誕生をお祝いに病室を訪れて来て下さる方々… 『良かった良かった元気な子で』 と祝福してくれた 嬉しくて何度も涙しては私は励まされた 一通り入れ替わり立ち替わりの波も収まり病室には両親と私の三人になった 母『退院したら暫くは内で療養しなさいよ』 恵理『うん…ありがとう』 久しぶりの親子水入らずだった 父『せやけどお前も子供もなんも無くて良かった…心配やったしな歳も歳で…』 恵理『嫌だお父さん私はまだ若いし』 父『あはは…そうか来年は40やんか』 恵理『言わんといて』 母がクスクス笑う 母『もう40かいな母さんも歳感じるわ、あはは…』 恵理『二人して意地悪やし』 父『大分元気になったみたいやな、お前の廻りにはたくさん温かい人ばっかり居てくれて幸せもんやな』 母『ほんまやで感謝せんとあかんね』
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