【夢を抱いて】

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次の日の夕方潮山海へとバンを走らせていた 助手席でチャイルドシートにがんじがらめになってる夢大が寝息をたてている バンを近くの駐車場へ滑り込ませ潮山海へと歩く 夢大はまだ夢の中だった 潮山海の暖簾を潜ろうとした時だった 『徳永さん…』 後ろから声をかけられた 振り向き声の主を確認する 恵理『はい…』 やつれた感じがする女性が立っていた 女『イイダサキといいます』 サキと聞いてはっとした 徳永『用はありませんので…』 そのまま潮山海の暖簾を潜ろうとした時 早紀『すみませんでした!』 私の足元で土下座する早紀さん 恵理『何に対するすみませんですか?みんな見てますし立って下さい』 それでも顔を上げない早紀さん 潮山海の前を通る人はやり過ごしながらジロジロ見る 早紀『謝って済ませようなんて思っていません、ただ…』 恵理『ただ、なんですか?とにかく立って下さい』 ようやく顔を上げて立ち上がった 早紀『お詫びだけは直接したくて…』 早紀さんの顔を初めてちゃんと見た 誰が見てもやつれているのがわかる 恵理『あなたがダイちゃんを殺した訳ではないので…詫びられても困ります』 早紀『けど…この一年半ずっとそう思い続けてきました、苦しくて…』 涙を零す早紀さん 恵理『はぁ?苦しい?何が?』 鼻を啜りだす 早紀『お詫び出来ない事…お詫びしてもやりきれない事…』 恵理『…じゃあ一生苦しめば?』 早紀『ごめんなさい…ごめんなさい』 私もどうしたらいいのか解らなかった 実際目の前に居る早紀さんには何の否もない ただダイちゃんを殺した奴の奥さんだと言うだけ… 私はきっとダイちゃんが過去に愛した人だから… それだけの理由で受け入れられなかったのかも知れない なのに、私は早紀さんに 『まだ苦しめばいい』 と言ってしまう とにかくやつれていた… 私が『もういいよ』と言えば早紀さんは苦しみから解放されるのだろうか… きっと早紀さんはまだダイちゃんの事を愛しているのかも知れない だから、苦しんでいるのかも… この人も私と同じように異常な嫉妬に束縛され苦しい毎日を過ごしていたと以前ボスさんに聞いた事があった 私と同じ… 恵理『早紀さん?』 早紀『…はい』 恵理『一つだけ聞いてもいいですか?』 早紀『はい…』 恵理『ダイちゃんの事を今でも愛しているの?』 早紀『……ハイ』
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