【夢を抱いて】

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ボスさんの乾杯の合図で送別会が始まった 夢大は母の膝の上に座り両手でグラスを重たそうに持ちながらジュースを飲んでいる 夢大は余り人見知りをしなかった かといって愛想を振りまく訳でもなく、どちらかと言うと大人しすぎて『子供らしくないねぇ』と良く言われていた 私から見て、まぁ良く言えば手の掛からないお利口さんだった 送別会も落ち着いた時間になりボスさんが私の横に座り小さな声で話しかけてきた ボス『早紀さんにはあったんかい?』 恵理『えっ…?』 ボス『何度も連絡あって恵理ちゃんに詫びたい言うてきかんでな…その度に断ってはおったんやがな、明日には大阪から居らんようになるし、早紀さんもこのままじゃあ可哀想や思うて、今日此処へ来るさかい言うて教えたんやわ』 恵理『…そうでしたか…先程外で会いました…』 ボス『悪いな勝手に…で受け入れたんかいな…』 恵理『…ィェ』 ボス『さよか…まだ許せんのかい?』 ボスさんはビールのグラスを空けると手酌でまたビールを注いだ 恵理『…許すとかじゃなくて、私が子供過ぎるのだと思います、早紀さんには何の罪もないのは分かっています…ただ…』 ボス『…ただ、なんな?』 恵理『…いえ…ボスさんから早紀さんへ伝えて貰ってもいいですか?』 ボス『かまへん、でなにを?』 恵理『…早紀さんの気持ちは受け止めましたと』 ボス『うん、わかった…』 恵理『すみません、後…屋久島に行くことや連絡先は言わないで下さい、これっきりにしたいので』 ボス『…そやな、約束する、これで早紀さんも少しは気が晴れるやろしな、悪いな』 恵理『いえ、ボスさんが謝る事ではないですから』 送別会も締めに入り皆さんから温かい激励の言葉を頂き加代ちゃんから花束を頂いた 本来なら温かい皆さんの激励に涙するはずの私なのに早紀さんが頭から離れる事がなく、皆さんの気持ちを無駄にしたような罪悪感に似た気持ちでいっぱいだった 今まで数え切れない程に支えられ、助けられ、励まされてきたと言うのに… 可愛げのない恩知らずの私が居た そんな気持ちを残しながら潮山海を後にした 憎んでも憎みきれないやるせない気持ちはまだまだ私の中に生きていたし このまま時間と共にダイちゃんの死が忘れられて行く事が許せなかった 最愛の人を奪われた事は一生許せるものではなかった…
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