【余所もん…】

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それから一時間程して前橋工務店の社長さんから連絡が入った 前橋『お世話になります前橋と言います 木村社長から連絡貰いまして』 恵理『わざわざすみません、生前は徳永がお世話になりまして』 前橋『いやぁこちらこそ徳永さんにはお世話になりっぱなしで… 徳永さん…残念でした 葬儀には参列させて頂きましたが奥様に挨拶もろくにしませんと』 恵理『いぇ気になさらないで下さい 徳永は前橋工務店さんお気に入りでした』 前橋『さようでしたか、それは有り難いお言葉で何よりも励みになります… ところでお話しと言うのはなんでしゃろ?』 話し方や受け答えを聞いているだけで前橋さんの人柄がわかる気がした 恵理『はい、突然で大変恐縮なんですが 新築のペンション12棟とメインホール1棟その中に花屋とフレンチのお店 それに私と子供が住む家を建てて貰いたいんです 全てログハウス 土地と丸太は既に用意してあります』 前橋『木村社長に頼んであった工務店さんと折り合いがつかんとは聞きまして内容はなんも聞いてなかったもんですから そんな広い敷地…場所は?』 少し戸惑った 屋久島と言った瞬間に間違いなく驚くと思ったからだ 恵理『…屋久島です』 自信のない声だった 前橋『えっ!鹿児島県のあの屋久島?』 やっぱり驚いた 当たり前だ、誰だって驚く 恵理『…はい…無理は百も承知です』 前橋『…えらいこっちゃ、木村社長が言葉を濁してたさかいに 理由がわかりました』 恵理『…やっぱり無理と言うか無謀ですよね』 前橋さんが次に言う言葉を考えると 殆ど諦めていた 前橋『…建坪は全部でなんぼですか?』 意外な言葉に少し戸惑った 恵理『延べ 350坪です』 前橋『…1155㎡』 恵理『はい…』 前橋『着工予定は?』 益々言いづらくなる 恵理『…来週です』 前橋『…ふぅ、遅れると不都合はありますんか?』 恵理『はい…どうしても6月末には完工したいんです』 前橋『…約四ヶ月ですか…ただ救いは全てログハウスだと言うことですね』 恵理『そうなんですか?』 前橋『えぇ丸太は組んでいくだけなんで早いんですわ 外壁の工事やらかなり手間は省けますさかいに まぁ工期は問題ないと思いますが 問題は職人さんの手配ですな』 前向きとも思える前橋さんの言葉は嬉しかった 恵理『…無理でしょうか』
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