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大阪から前橋工務店の前橋さんと棟梁と呼ばれている稲葉さんがわざわざ出向いてくれた
挨拶を交わし各々の名刺を受け取った
恵理『コーヒーで大丈夫ですか?』
お構いなくと口を揃える
前橋『早速ですが、図面を拝見させて下さい』
図面を受け取るとテーブルに広げる
前橋『この図面はどちらの設計事務所に依頼されたんですか?』
恵理『えっ!設計事務所ですか?』
前橋『えぇ、そうです』
恵理『たぶん徳永が描いたかと、書かれている字は徳永の字ですので』
前橋さんと稲葉さんが顔を見合わせる
恵理『…何か不具合でも?』
前橋『いえ、その逆です…精密な図面です、普通依頼する工務店が忙しくて手が回らない場合は設計事務所で図面は請負ますので細かな所を確認する必要がありますから、聞いたんですわ』
恵理『そうなんですか…私、はっきり言って無知なもので』
前橋『いえいえ、そんな事ないですよ』
稲葉『この丸太のサイズもログハウスには適しています、大地さんは流石ですね』
恵理『稲葉さんは徳永の事ご存知なんですか?今、大地さんとおっしゃったんで』
稲葉『えぇ私の師匠です…大地さんは』
恵理『えっ?師匠って徳永はずっと花屋だったと思いますけど』
稲葉『大地さんと知り合ったのは二十年前で私がまだ17の時でした
高校中退して大工の見習いを始めて前橋工務店さんの下請けばしてたんですわ
前橋さんとこの先代と花折々の木村(ボス)社長が知り合いでして
丁度その頃ガーデニングが流行り始めて新築の庭のガーデニングを前橋さんとこが花折々に頼んでいたんです、そのガーデニングの仕事に大地さんが来ていまして
それからの付き合いなんですわ』
恵理『そうだったんですか…けど徳永が師匠って?』
稲葉『それは仕事では無くて人生というか…
大工の駆け出しの頃は毎日棟梁に怒鳴り散らされ怒られては悔しくて泣いてばかりいたんですよ
そんな時大地さんは決まって缶コーヒーを差し入れてくれていつも励まされていました
[あんなイナちゃんよ、毎日怒やされて悔しいか?何で怒やされるかわかるか?イナちゃんは仕事を待ってるだけや
ただ口を開けてる雛鳥…
棟梁の仕事を盗み捲ってさっさと自立しろ…
大工なんて棟梁は二人もいらん…
さっさと独立しろ]
って会う度に励まされてまして』
恵理『…徳永らしいですね』
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