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「相田さんの名前は、唯って言うんだね。因みに、俺の名前は知ってた?」
「はい。」
「あ、これか。」
私が視線を落としたのに気付き、通行証をつまんだ。
「はい。」
「そっか。改めて、中小路 真也です。宜しく。って、本借りたりしてるのに今更っていう感じだね。」
「いえ、こちらこそ宜しくお願いします。なかしょうじ。って珍しい名字ですね。」
「初めての人は読み方を迷うみたいだね。」
「確かに。私も迷いました。」
「あ、ごめん。もう少し話していたいけど、もう行かなくちゃ。相田さんに会いたいから抜け出して来ちゃったんだ。本ありがとう。後でメールするね。」
女の子が喜びそうな台詞をさらっと言ってしまう。そんなタイプの男の人なんだろうけれど、走り去る後ろ姿から目が話せない。
メール、来るのかな。社交辞令かな。
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