虚ろな記憶

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 傍から見ても、凄くいい男ではないと思う。  けれど、何か惹き付けられるものがある。   未だにそれが何なのかが分からない。分かれば少しは楽になるかもしれないのに。  「どうしたの。ぼーっとして。」 「真也が遅いからでしょ。また遅刻。」 「ごめん、ごめん。」 「もう、しょうがないなぁ。」  半ば諦めに似た溜め息が出る。どうして真也は待ち合わせとなると必ず遅れてくるんだろう。   私がいつも待っているのが当たり前くらいにしか思ってないんだろうな。  「唯、ごめんね。怒ってる?」 「怒ってないよ。忙しいんでしょ。」 「そ。忙しかった。」 「忙しいのに時間作ってくれるだけで嬉しいよ。」  真也の口癖の「忙しい」は、もう聞き飽きたよ。   そういえば、何かで読んだなぁ。「忙しい」が口癖の男は、最低。 .
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