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「あ、アントーニョ……?」
薄暗く、霞む視界の中、ロヴィーノは見慣れた背中の持ち主の名を呼んだ。
とても小さな声だったが、アントーニョには聞こえたようだ。
すぐにロヴィーノの顔を覗きこんだ。
「ロヴィ!!目ェ覚めた?どこも痛ない?怪我とかしてへんか!?」
「近いしうるせーよ、バカアントーニョ。怪我って……あぁ、落ちたのか、俺ら。」
上を見上げると、そこには人一人は余裕で落ちてしまいそうな穴から覗く、青い空があった。
たしか、弟達と宝探しだとか騒ぎながら探索していたら、足を滑らせて……。
アントーニョに腕を掴まれたことは覚えている。
焦ったように声を荒げて……そこからは記憶がない。
打ち所でも悪かったのか、落ちてから気を失ってしまったんだろう。
「ごめんなぁ……親分がもっとはよひっぱったれば落ちひんかったかもしれへんのに……。」
「まったくだ。気をつけろよな。」
本気で落ち込んでいるアントーニョに、馬鹿にするように言う。
すると、アントーニョは困ったような笑顔を見せた。
「ロヴィも足元気ぃつけや。俺がいつでも助けられるんちゃうねんから。メッ!やで。」
「うぅ、うるせーよっ!ガキ扱いすんじゃねぇ!……っつ。」
アントーニョの言い方が自分を子供のように見ているようで、思わずでかい声を出してしまった。
力を入れたせいか、右腕に激痛がはしる。
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