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「わかった……。けど、ほんまに大丈夫やで?」
小さく返事をしたアントーニョは、念を押すように言った。
そして、少しずつ裾をめくる。
「……っ。これのどこが、大丈夫なんだよ」
間違いなくロヴィーノを庇って負ったであろう傷。
こんな怪我をしていても、自分よりロヴィーノの心配をする。
自分が背負っていたリュックが近くに置かれているのを見付けたロヴィーノは、リュックを開け、あるものを探し始めた。
なんの前触れもなく放置されたアントーニョは、きょとんとしながらその様子を眺めている。
トマトやパスタ、トマトなどをリュックから次々と取り出し、やっと目当ての物を見付け、引っ張り出した。
「ロヴィ?……なんで白旗出してるん?」
「振るわけじゃねーよ。包帯とか持ってねぇし、何もないよりマシだろ」
布を、括り付けていた棒から外すと、結びやすい大きさに破ってアントーニョの足に巻きつける。
不器用ながらも必死にやっているロヴィーノを見たアントーニョは、柔らかい笑みを浮かべた。
「……そうやな。ありがとうな!ロヴィーノ!」
「ふん。お前が動けねぇと、誰が助けを呼ぶんだよ」
「……それって親分一人で行くん?」
「他に誰が行くんだ?」
布を上手く結べないようで、何度もやり直しながらも悪態をつくことを忘れないロヴィーノ。
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