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ここはとある屋敷の一室。
俺の目の前には威厳があり、白髪混じりのオールバックが特徴の中年の男がいる。
この部屋には、俺と中年の男、つまり俺の親父の二人しか居ない。
「俺はここを出ていく」
俺は目の前の椅子に座っている親父にそう家出を表明したけど、俺はまだ中2のガキだった。
でもそんなことは関係無い。
俺はもうここには居れない理由があるのだ。
ちなみに親父は世界のVIPが、必ず宿泊するぐらいの歴史の長いホテルを経営していて、『社長』と呼ばれる地位にいる。
「……逃げるのか?」
親父は読みかけだった分厚い本にしおりを挟み、閉じながら俺に優しい口調で言った。
そのどす黒い曇天を思わせる瞳は、俺を哀れむように見つめている。
俺はただうつ向いて、服の裾を握り潰し、今にも目から溢れ出しそうなモノを堪えるのに必死だった。
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