『     』

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これがこの国の王女。 王女に歯向かえばすぐ死刑。 命令に従わなくても死刑。 城にお金が足りなくなれば愚民どもから搾り取る。 全てが全て彼女のもの。 この国の人々は王女の手の中にあると言っても過言ではない。 そして、この物語はこの世で一番哀れで…狂おしくて…悲しい…そんな物語… ―――――――――――― 王女には好きな人がいた。 男らしくて優しくて経済力もあり、剣の腕もたつ… 海の向こうの青い王子様。 王女は朝起きては、すぐに馬車を出し青の国へと向かう。 そして毎度のように影から見ているだけなのだ。 話しかけたくても話せない。 だってあの青い王子様は緑の女と楽しそうに話しているのだから。 ―――――――――――― 数日前のことだ。 この時も同じように朝起きてすぐに馬車を出し青の国へと向かった。 今日こそは話しかけようと勇気を出して一歩出した瞬間…いつもと違う様子に気付いた。 いつもなら城の者と難しそうな話をしているだけだった。 でも…今日は違った。 笑いながら誰かと話している。 王女は不思議に思いその相手の顔を見た。 「…………っ!?!?」 なんと…それは女だった。 長い緑髪を二つにくくっている女。 見た目からしても釣り合わないと、王女は思った。 「な…なんで…? あの人を好きなのは…私なのよ…?」 王女はその場にヘナヘナと座り込んだ。 そして、あの細めた目で緑の女を見た。 「……許さない… 絶対に…許さない…!!」 ―――――――――――― そして、今に至るわけだ。 王女は毎日王子様と女が話している姿を憎む為だけに出掛けていた。 「許さない許さない許さない 許さない許さない許さない…」 と、言ったまま。 ―――――――――――― そして、ある日…王女は大臣を部屋へ呼び出した。 「どうなされましたか? リン王女様。」 「……………なさい…」 「はい?」 「緑の国を滅ぼしなさい!!!」 そして、緑の女が育った…家族もいた…友人もいた…緑の国は滅ぼされた。 14歳の王女の一言で。 その命令を出したあと、王女は楽しそうにいつもの口癖を言った。 「あら、おやつの時間だわ。」 悲しむ人々の嘆きは王女には届かない。 たとえ、幾多の家が焼き払われ幾多の命が消えていっても。  
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