『     』

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「ひっとらえろ!!!」 ダダダダダッ!と足音が大きくなったと思うと、一斉に住人達が入ってきて一瞬でその者を捕らえた。 その者も抵抗する気はなく、ただただ無表情だった。 「何か言いたいことはある?」 赤い剣士がそう言うと少しムッとした表情でこう言った。 「この……無礼者っ!!!」 そして、その者は牢屋へと閉じ込められた。 「処刑の時間は午後三時よ。 それまで存分に死にものぐるいしてなさい? 王女様。」 ガチャン! 王女と呼ばれたその者は反応もせず、ただ壁を見つめるだけ。 「午後三時… 教会の鐘が鳴る時間…」 その者は何かを思い出すように静かに目を閉じ座り込んだ。 ―――――――――――― そして、ついにその時はやってきた。 その者は手錠をかけられ断頭台へと向かう。 向かった断頭台の回りには住人で溢れ返っている。 手錠をかけられたその者が現れると、ワアッ!と歓声が上がった。 「早く処刑されろ!」 「私はあいつに夫を殺されたのよ!」 「俺は妹だ!」 「俺は母さんを…!」 色んな言葉を浴びせられてもその者は無表情で聞こえていないかのように、民衆などには目もくれなかった。 そう、あの歯向かった男を見なかった時のように… ガチャン…! その者は断頭台に首を置き動きを封じられた。 もう一度、ワアッ!と歓声が起きた。 ゴーン…ゴーン…ゴーン… 午後三時を知らせる鐘が鳴った。 そして、その鐘の音が収まったあと…彼女はこう言った。 「あら、おやつの時間だわ。」 ザシュッ その者の首が落とされた時、民衆に紛れ泣いている者がいた。 ガラスの小瓶を握り締めた…黄色の髪の者が… 『悪の華 可憐に散る 鮮やかな彩りで 後の人々はこう語る 嗚呼 彼女はまさに悪ノ娘』  
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