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前からたまにこの道を通っていた。寂れているこの雰囲気が好きだったから。でも元々彼女がいた訳ではなく、二ヶ月くらい前、丁度こんな傘のない雨の日に文房具『たなべ』の前に藍色のレインコートを着た彼女が現れた。唐突だった。この時間帯にここに人がいること自体不思議なことだったが、その彼女の異様な美しさもあいまって、そこだけが異次元の出来事のように感じられた。そのとき何故だか彼女に声をかけられずにはいられなくなった。別にロリコンの気があるわけじゃない。むしろ子供は嫌いほうだ。それでも何故か、そのまま見過ごすことは出来なかった。
「こんにちは」
「…んにちは」
その時から僕達は、UFOを探し続けている。
「…ねぇ、UFOを見つけたらどうするの?」
「帰るの…」
家にだろうか、UFOにだろうか。
「どこに帰るの?」
そう聞くと、彼女は手を濡れるのをいとわずに空を指差した。その先を見ると、紛れもない曇り空だった。
「あそこ…」
空が帰る場所。何だか羨ましくなった。UFOさえ見つけたら、彼女はホントに身軽で、自由なんだ。
「帰れるといいね」
「うん…」
雨は少しずつ強くなってくる。もう自分がずぶ濡れであることに気付く。でも、まあ、こんなファッションや健康にしがみつくことはない。僕は少女とUFOを探している。それも真剣に。いつか、今にでも、見つかるといいな。
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