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「もう、終わったことだし」
灯子の切なげな表情に、言葉を無くした。
沈黙が訪れる。
「セーフッ…!まだ部活始まってないよね!?」
そこに突如に響く、高い声。
恵だ。
男子バスケ部のマネージャーの彼女とは、高校になって知り合った。
可愛くて、今時の女の子っていう表現がピッタリ。
庇護の対象と言われるような、お姫様タイプだった。
「私達がここを歩いてる時点でまだ始まってないって」
「そうそう。本当、そそっかしいんだから」
「あ、そ、そっかぁ~…よかったぁ…」
安心してしゃがみこむ恵。
よほど走って来たんだろう。額にはうっすら汗が浮かんでいた。
「ほーら、早く行かないと部長に怒られるよー?」
「うわ、やば!急ごっ灯子、恵!」
「う、うん」
「待ってよー!!」
光輝の一言で腕時計を見ると、もう部活開始の10分前になっていた。
私達はダッシュで部室に向かった。
「せ、セーフ…?」
「ギリッギリな」
「ゆ…裕弥…」
体育館に入ると、眉間にシワを寄せて仁王立ちの状態で、部長が私達を迎えた。
裕弥は隣のクラスで、今年から部長と男子バスケチームのキャプテンをしている。
3年生からも頼りにされてて、後輩の面倒見もいい、今どき中々いないタイプの奴だ。
そして、私が密かに恋してる人。
規律なんか知らない。
ただ、素直に好きだって思える人なんだ。
「灯子、一年待ってるから」
「あ、うん。ありがとう」
裕弥の呼びかけにより、灯子は一年生の指導に向かった。
女子はまだ3年生が引退していないから灯子はキャプテンではない。だけど、一番キャプテンに近い存在で、裕弥同様一年生からとても好かれていた。
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