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外はすっかり暗くなった。
各部活もそれぞれに活動を終えて、あたりはどこかシン…としている。
まだ少しだけ寒い5月の初めの空気の中、私は校門で灯子を待っていた。
今日は珍しく顧問がやってきて、女子2年生メンバーと話し合いをした。
私はその間に片付けをしていたので内容は詳しく知らないが、キャプテンを決めていたのだろう。雰囲気は消して甘くはなかった。
春の大会を終えて、夏の大会が近づいている。
私はマネージャーなりに彼ら選手をしっかり支えていくんだと、改めて心で思った。
「ごめん、沙叉!」
激しいブレーキの音とともに灯子の自転車が真横に止まった。
かなり急いでくれたようで、灯子の綺麗な長い黒髪が乱れていた。
「ううん。お疲れ様!今日もかっこよかったよ」
「ありがと。でも、私ばっかり見てちゃだめだよ」
「わかってるって」
こういうことが、嬉しく思う。
バスケはチームプレイだ。
メンバー同士の信頼はとても大切で、灯子は灯子なりにメンバーと打ち解けているとは理解している。
でもやっぱり、私と話しているときに感じる空気は特別だった。思い込みではなく、絶対に。
「お。お疲れー」
私達が動かずそこで話していると、裕弥が清々しい表情でやってきた。…その後ろにはコヤマもいたが。
「お疲れ。なんか機嫌いいね」
「そりゃあね、ようやく俺らの時代のスタートが完成されたからさ!」
私は裕弥に言ったつもりだったんだが、コヤマがでしゃばって話し出した。
「時代のスタート?」
「ああ。」
裕弥は灯子の背中を軽く叩いた。
「頑張ろうな、新キャプテン」
間が少し開く。
そして叫んだ。
「えーーー!?灯子がキャプテン!?いや、予想はしてたけどっ!え、え?すごいっおめでとう!なんで直ぐに言ってくれなかったの!?」
「…とりあえず落ち着いて」
嬉しかった。
ただものすごく。
まるで、自分のことのように。
キャプテンだから何かあるってことじゃないけど、肩書だけでもすごく名誉なこと。
灯子の場合、ただの肩書だけにならないからすごいと思う。
どこかの政治家とは大違いだ。
「よーっし、今日は記念に飯行くぞー!」
「おー!」
「お前が仕切るな!コヤマ!」
新しい、私達の時代のスタート。
その始まりと一緒に、それぞれの物語も一斉に始まっていた。
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