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暑い暑い夏がやってきた。
期末テストも終わり、部活一色の生活となって、早一週間。
今日も日照りは強く、外周を走っている部員は苦しそうだ。
「頑張れ!ラスト一周だよ!」
私達マネージャーはもちろんトレーニングする必要はないので、横に立って皆を応援する。
冷たい水も用意するのだが、それは恵と一年マネがやってくれている。
「灯子!頑張れ!」
男子に続いて走る女子の中でも、灯子は少し飛び抜けた位置で走っていた。
声をかけると、微笑んでくれる。
煌めく汗、たなびく一つに結んだ長い黒髪……ほんと、もう、
「かっこいー」
「!?」
まるで心を読むかのように、やはりコヤマが背後で声を出した。
「何よ、もう走り終わったの?」
「当然。どっかの誰かさんが仕事一年に押し付けて灯子見てる間にねーっ」
「う、うるさいなあっ」
図星をつかれてムッとした。
灯子しか見てなかったから、男子が走り終わっただなんて気づかなかった。不覚だ。
「こら、外周終わったら体育館へいけ」
そこに裕弥が現れて、コヤマは軽い返事をして体育館に向かって行った。
「沙叉も、灯子だけじゃなくて俺達の世話もしてくれよ?」
「…うん!」
頭を小さく叩かれて、なんだか嬉しかった。
裕弥が好きなことは、まだ誰にも言ってない。
もちろん灯子にもだ。
別に灯子は言ったところで気にしないとは思うが、なぜだか言い出せない。
勇気が出ないのだ。あの規則があるからかもしれないが。
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