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―――小さく、小さく。
細かく、細かく。
ひたすらに刻まれていく……
「痛っあ゛ぁぁあああいいぃひぎぎぃ……!」
足先から刻まれている自分の弟、“ノゾム”はこれ以上ないくらいの悲鳴と泣き声を無機質な白い壁に響かせながら縛られた手をジタバタさせている。
そのすぐ隣には、全身黒づくめの男が痛がる“ノゾム”の顔を見ながらニヤニヤと笑っていた。
男の手は休む事なく包丁を動かし、まるで葱を刻むようにノゾムを削り取っている。
そんな異常な光景を押し入れの僅かな隙間から見て、吐き気を抑えるように静かに泣く。
ごめんね、望……兄ちゃん出ていく勇気が出ないんだ……
汗ばんだ体はまるでセメントのように固まって押し入れから動かないまま静かに震えていた。
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