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~あれから10年後~
レンガ造りの家のとある一室、そこで一人の黒い髪と黒い瞳の青年が荷物をまとめていた。
「え~っと、これでもう忘れ物はないよな?」と独り言を言いながらキョロキョロと周りを見回している。
すると、後ろのドアを開けて一人の大きい男が部屋に入ってくる。
男は、「タイキ、準備は出来たか?」と太い声で聞いた。
タイキと呼ばれた青年はその黒い瞳を輝かせながら振り向き、「ああ、親父、もう荷物はまとめたぜ。」と元気よく答えた。
すると彼の父は苦笑いを浮かべながら「これを、忘れているぞ。」と肉焼きセットを差し出した。
「えっ?…あ~ありがとな親父」タイキはありがたそうにそう言った。
彼の父は「ハンターにとって肉焼きセットは必需品だ、そもそもクエスト中は……」タイキは父が語り出したらしばらく止まらないのを知っている。しかし彼はその話を止めようとはしなかった。父は昔は、凄腕のハンターだったらしい。今は、ケガで引退してしまったがハンターとしての情熱は変わらず、タイキは幼い頃から父の武勇伝を聞かされていた。
そのためか、タイキ自身もハンターに幼い頃からあこがれ続け、先日16歳になったのをきっかけに大きな町ノーティスでハンターデビューする事になったのだ。
そして父の話も終わり「じゃあ、俺そろそろ行くよ…。」と言いタイキが立ち上がった瞬間「おっと忘れるとこだった。」と父はとても細長い包みをタイキに手渡した。「何だよ?これ。」とタイキは包みを開けるとそこには鉄製の太刀があった。
「これは?」とタイキが訪ねると父はニカッと笑い「鉄刀【神楽】俺からの選別だ持って行け」と答えた。
タイキはその太刀を握りしめ「…ありがとう…おれ…絶対一流のハンターになるな…。」というと荷物を持ち、北の町ノーティスに向けて旅立った。
目に溜まった涙を隠すようにうつむきながら。
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