序章

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その後 信秀をなだめた信長は、まだ日が中天に昇るまでに、臣下の前田利家、丹羽長秀を呼び出し、先ほど誘宵に用意させた筒銃五千丁を各々の隊に持たせた。 「利家……あとお前の隊の精鋭に駕籠を持たせてくれ。 長秀は足周りが早い馬で、先に登城する文を稲葉山城持っていってくれ。 あと夕刻までには着くと……」 と懐にしまってあった文を長秀に渡した。 「あと利、お前の狩猟に使う服装を貸してもらえるか?」 「なんでだ? 何かに使うのかあにぃ?」 「ん? 着ていくんだ美濃登城までの道のりで……」 利家はまったくわからなかった。 利家は後世に伝えられる歌舞伎者“前田慶次郎“とは違う形で派手好きであった。 正装の礼服の烏帽子を外して直参したり、信秀の前でも、狩猟と全く同じ服で謁見していた。 故にこれから美濃に赴くという時に、狩猟の山賊の様な服を、着ていくと言うのが利家にはわからなかった。 しかしあの信長の考え、自身もその謀により信長の前に敗れ去ったのだ、意味のない事をするはずはないであろうと、利家は心の中で納得した。
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