序章

2/30
前へ
/357ページ
次へ
「ばばさま!!ばばさま!!」 美濃斉藤家朝……… 木刀片手に持った女性が本宅の床を鳴らしながら大声を上げて歩いていた。 「なんですか帰蝶!!こんな朝早くから大声を上げて!! 旦那様や吉竜様はまだお休みになられているのですよ。」 帰蝶と呼ばれた女性は持っていた木刀を床に叩きつけると、宥めにきた女性にぺこりと頭を下げた。 「それと私の名はおねいと言っているではないですか、それをばばさまばばさまと………」 おねいは深くため息をはくと、仕方ないと自分の木長刀を取り出した。 おねいとは斉藤道三がまだ松波屋勘九朗と名乗っていたときの妻である。 道三が下克上する際のパトロンとも言われていたが、松波屋の油問屋は勘九朗が商売の仕方を変えて大きくした また長井姓を名乗り頼芸(美濃の正当城主であり後々敗訴された)を支えていた際は、松波屋の金を使いながら 名前を美濃中に広めて大きくしていた。 現在は道三の愛人となり支えている人物である。 武芸にも秀でていたとも言われており、度々家宅に訪れていた際に帰蝶に長刀芸を教えていた。 「きのうからおじい(道三)の近衆の”右手”がおらなんだから、なかなかになまりそうだと思っておったが、ばばさまがおると聞いて嬉しくて……… すまん」 「といいますか帰蝶はもう直ぐ、尾張の信秀公の嫡子”信長”様に嫁ぐのでしょ。 武芸嗜む前に、華や舞芸に精を出さねばならないのではないですか? まったく……… 右手!!右手!!」 とおねいは長刀を天井に向かってここ突いた。
/357ページ

最初のコメントを投稿しよう!

390人が本棚に入れています
本棚に追加