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すると黒衣の装束に身を包ませた女性が天井から現れ、おねいの側に頭を垂れ鎮座した。
「おお右手!!いたのかお主!!何故に昨日から姿をださなんだ!!退屈だったではないか!!」
帰蝶は黒衣の女性に驚くと、床に置いた木刀を持ち上げた。
「すみません帰蝶さま。
実は一昨日より吉竜さまより、帰蝶さまには花嫁修業させよと近衆全てに言い伝えられまして……
なので顔を合わせれば必ず武芸の付き合いをさせられると隠れていましたのです。
何も言わずにいた事をお許し下さいませ。」
右手はそのまま頭を垂ながら、帰蝶の木刀の範囲からそれつつ、懐から文を取り出し、おねいに渡した。
「私に?
なにかしら……あら旦那様から……」
先ほどまで愛し合っていたおねいだが、やはり好きな殿方からの文は嬉しいのか、顔をにやけながら読んでいたが
やがて呆れ顔になると文をまるめて、粉々に破り捨てた。
「ん?
どうしたのじゃばばさま……うわぁ!!!」
おねいはそのまま脇に抱えていた長刀を帰蝶に振り下ろした。
「ばば言うな……アホ娘……」
いつもならこうしたおねいのやり方は好きで反撃をする帰蝶だったが、えも知れぬ威圧感をこめた一撃に、たじたじと汗を流しながら後ろに下がった。
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