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「で……おじいからはなんと?」
とりあえずおねいの殺気にも似た雰囲気を変えようとする帰蝶
一瞬あきれた顔になったおねいだが、ふうと息を吐くと床に刺さった木長刀を放置しつつ
「お前の方で手ごろな娘を”帰蝶”として尾張のあほにだせと……」
と答えた。
帰蝶はおねいから聞いた文の内容におじいらしいと笑った。
「右手……旦那様には私から直々に伝えておきますから、おまえは杏里と共に帰蝶の袖通しを手伝いなさい。」
おねいは床に突き刺さった木長刀を抜くと柱に立掛けると、道三の寝屋に向かった。
「え……何かあるのか右手?」
「お忘れにならないで下さい……今日は信長さまと初めてお会いになる日ではないですか……」
右手はちらっばった文を拾いながら、床に隠れた部下に言伝を伝え、帰蝶の木刀をそっと取ると帰蝶の体を回れ右にさし、
そのまま帰蝶の反論を無視しつつ、お側つき”杏里”の所に連れて行った。
道三の娘”帰蝶”の結婚は政略に近かったが、後世の逸話の中では、幼少時に合っていた信長を見初めた帰蝶が父道三に申し出たや、
体に弱い帰蝶の病を治す為に尾張に嫁ぐ必要があったなど、ただの政略結婚ではなかった証が多聞に残っている。
これは後の二人の関係が幸多いものだった故に残っているのではないのであろうか……
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