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尾張信秀の御母屋少し離れた錦鯉が飼われている池
蒼いじんべえに長身で、眼鏡をかけた青年が池の鯉に餌をやっていた。
織田信秀は荒々しい戦国武将の名を残しているが、その反面自分の城の庭宅や、景観にすごく拘っていた。
また庭師と紛れ、今で言う日曜大工に勤しむ趣味を持っていたという話がり
安土城建設時、信長もそこは残していた。
青年が餌をやり終え、池周りを掃除しようとしていた時
そ軽装の鎧を羽織った女性が青年に近づいてきた。
「若様……ここにおいででしたか、御館様がお呼びで御座います。
急ぎこれにお着替えになり母屋の方にお向かいになって下さい。」
青年は無言でゆっくり女性に向き、女性に餌を渡すとじんべいを脱ぎだし、女性が持ってきた服に着替えだした。
「あと町下におきまして今川の色をしたものが複数おりました。
普通に商いをしておりましたので、表立った取り押さえもできませんでしたが……」
「かまわん……どのみち今あの今川殿に攻め込む口実を与えたくはない……
父上がご存命である限り尾張をまたぎはすまい。
それより甲賀の草が城近くにはびこる事だけはせぬようにいたせ……」
「甲賀者が……小太郎の間引きにより少数になったと油断しておりました。
気をつけるようにいたします。」
「後は、利と唐頭に”筒”を五千丁用意させるようにつたえておけ」
「”筒”をですか?」
女性は不思議そうな顔を浮かべてはいたが、青年の思慮深さに不安を消した。
やがて綺麗に着替え終えた青年はにこりと静かに笑い女性の簪をそっと取ると、近くの垣根に向かって投げた。
投げた簪は隠れた忍びの咽元に突き刺さり絶命さした。
「私に気づかれるようではまだまだ甘いな……
誘宵……配下のものに一層の鍛錬をつませよ。」
「御意に御座います”信長"様」
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