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尾張城下町の一角の酒屋……
渡りの商人達が今日の仕事終りにと酒を飲み、明日からまた隣町に向かう英気を養っていた。
「飴の売れ行きはどうだった?」
一人のお面屋が酒と漬物を食べていた飴細工師に声をかけてきた。
「なかなかだった……駿河の塩を使ったのだが、尾張ではあまり口に合わなかったのかもしれないね。」
「こちらもわざわざ恵比寿の面が割れてね。
しかも見ていたお客さんの簪で真っ二つ……」
「あらら……戦火が続いていたから幸先よいと睨んだのが甘かったのかねぇ」
お面屋は飴職人の酒を取ると、あまっていた杯に注ぐと一気に飲み干した。
「一度、俺は帰ることにする。」
「明日には立つのかい?」
「いや今晩にも立つ事にしようと思うよ。
旅支度が乏しいので……」
「お客さん明日に立つのかい?
ならそば雌の所にある明神様にお参りしておいきよ……旅の道中を願掛けて」
とちょうしを二本持ってきた酒屋の主は、にこにこと笑いながら、明神神社の場所を伝えて奥に消えていった。
やれやれと持ってきたばかりのちょうしを持ち、お互いの杯に注ぐ
ふとちょうしの奥にあった新しい杯に気づく飴職人
今ある杯を下げなかった事に怪訝に感じ、杯を手にとる。
「!!!!!!!!」
「どうした!!」
杯を手に取った飴職人は目を見開くと、怯えた顔を浮かべ周りを見渡しだした。
訳がわからなかったお面屋は未だに恐慌状態だった飴職人の杯を奪った。
怪訝に思い杯の底を見る。
そこには一文字”見”
それを見たお面屋は杯を割ってしまう。
お互い震えながら袖の財布を出すと金子を机に置き、焦るように外に出た。
外に出た二人は周りを見渡した後、お互い逆方向に歩き出す。
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