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濃姫が輿入れしてから数年
あいも変わらず、尾張と駿府義元との小競り合いは続き、織田方は平安な時を迎えれなかった。
また信長の周りも慌しく、不穏な空気が信秀無き、城の中を悪くしていた。
今日も織田宿老”平手政秀”が誘宵の報告書を見ながら、顔し噛めていたのである。
「しかし、土田の方にも困ったものだ、こうまであからさまに信長公敗訴に乗り出すとは……
同調した家臣の中に柴田殿も入るとは思ってなかった。」
「はい……最近では両名が戦に出ているのをいい事に、表立って信成様推挙を募っており、教継さまもこれに動こうとしております。」
信長ははっきり言って、破天荒であった。
戦武器の研究、行政、全てにおいてそのやり方を回りがあまりにも理解できず着いて行けてなかった。
また正室の濃姫しかりだが、あまりにも分け隔てなく接するのである、確かに家臣と部下としての枠を外すことはしなかったが、それでも昔ながらの豪族や織田に仕えていた武将達にはがまんならぬ所が見えていたのは事実であり、これを由とはいえなかった。
「なんとかわしからも、土田の方に進言しこうした流れをお止め頂くようにお願いいたそう。
すまんな誘宵、わしの為動いてもらい。」
「いえ、元々この流れは把握せねばと思っておりましたので……
しかし平手さま、この流れとても信長様が家督を継いだ所で収まりそうにございませんが、いかがしたら良いとお思いですか?」
「原因は信長さまの悪い意味で純粋な人になる様な育て方をしたわしが悪いのだが……」
信長が純粋、誘宵にはまったく理解できなかった、信長ほど冷静に物事を判断し、事を成していた方を知らないと思っていたからである。
いままで信長は矢面で戦う信秀さまの裏をしっかり支えてらした、どんな汚いことですら、成し遂げ御してこられていた。
平手はいまだに自分の言に理解できずにいた誘宵を見て笑う
「そこが、いまだに理解できぬようでは、主もまだまだだな。
信長様は主君としての重さから逃げられているのだよ、いまだにな。
だから弟の信成様が家督を奪おうとしていても、何も言われない……一番にそれに考えなくてはならないのは信長さまなのにな。」
政秀は誰よりも信長を案じていた、それはいずれ織田当主の教育係としての責務以上に……
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