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「待ちなさい!!
あの信長の正室とは言え、今ここ織田家当主信秀の正室は私、その当主の妻に対して、その挨拶はどうなの?」
濃姫はやれやれと思っていた。
輿入れしてしばらくは、本当に案じて頂いていると思っていたが、それが連日となるといくら鈍感といわれる濃姫にも理解できた、この方は信長の存在全てが憎いのだと。
それからは黙って、明け渡すことにしていた。
家中で火種を作りなかった事もあるが、何より実の母に自分の嫁が困らせたと信長に気を持たせたくなかったからである。
濃姫が顔をしかめながら、もう一度頭を下げようとした時、政秀が間に入ってきた。
「何?平手、これは正室としての教育でしてよ、濃姫には織田の正室として教えてあげなくてはならないの」
「失礼ながら……それならば自身の身分を笠にきた物言いはいかがなものかとおもわれますが
まして次代の織田家当主は信長公、その妻濃姫さまのやりようは家を守ることも含まれております。
故にかつての巴御前の様に、こうした剣術稽古もおかしくはないと存じます。」
土田の方は二の句をつげなかった。
平手の方が何倍もこうしたやり取りは上だったからである。
「ふん……本当に信長が家督継げるかなどわからない事でしょう」
「これはまた異な事を、確かに”家臣内では信長公敗訴に動く不忠者”がいると聞いておりますが……」
「不忠?はっ次代当主の自覚もなく、ふらふらと動いている存在を、不安に思うは織田を慮る家臣なら当たり前じゃないかしら?」
「信長公が織田家次期当主、これは現当主織田信秀様のお言葉、この言葉の意味さえ考えず”誰か”の甘言に惑わされ、己の身を一番に考える者達を不忠といわずしてなんともうしましょうか?」
平手はゆるりと返す、まるであなた様のせいで今、不安定な織田家になっているのだと責めているように
「平手、よくよく考えることね、だれが次代当主にふさわしいか”己の身を一番に考えるなら”」
「この平手、信秀様が小さき頃よりこの織田家に仕えていたもののふ、己が命は織田家と考えとおります。
その命を考えるならば、自身の命など軽く考えるにあたえせぬと思っておりまする。」
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