花霞

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あれから一年後。 キミに出会えることなく、また桜の季節を迎えた。 桜の小道は、八分咲き、九分咲きといったところで、ほぼ満開だった。 あとから知ったのだけど、この桜の小道では宴会のようなことは一切認められていないのだそうで、だから案外静かなのかもしれないと思った。 今年の桜は満開になるのが、去年と同じで平日だから、その前の週末は満開には少しだけ早かったが、それでも少し早めの桜を見にくる人たちもいた。 平日に桜を見にくるのは、ご近所のお年寄りとか主婦なんだろうな。 桜は咲き始めてから散ってしまうまでの間、その時々の状態がそれはそれで綺麗だった。 「満開に近くなってきたな…。」 今年は桜が咲いてから暇を見つけては此処を歩いた。 キミにまた出会えることを期待しつつ…。 ふと見上げた空。 なぜか、一年前を思い出すような光景だった。 そう、こんな水色の空で、桜の小道のずっと向こうを見ると、今にも消えそうなキミがいたあの日。 でも、本当にキミはどこかに消えてしまった。 名前も知らなければ、ましてや家だって、この近くだとしか聞いていなかった。 だから探しようがなかった。 「仕方ないよ…。」 独り言を呟いて、歩き出した。 今年の桜も綺麗に咲いていた。 キミを見かけたのはたしか…この辺りだったな。 ふと立ち止まり、ここから見つけたときのキミと同じように桜を見上げた。 今でもあの時のキミは白い羽根の生えた天使だったんじゃないかと思ってしまう。 いくら待っても出会えず、時々、無駄に街を歩き回ってもみたが、会えずじまいだったから。 空に向かってため息を一つついて、再び歩き出すために視線を戻すと、遠くに誰かがいるのが見えた。 まるであの日のように。 .
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