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「そっか…。でも僕はこの桜が好きだな。むしろ、ますます好きになっていく。」
「どうして?」
「キミと出会えた桜だから。」
「え?」
桜色に頬を染めるキミはやっぱり綺麗だった。
「綺麗だな…桜も…キミも。」
「ボ、僕は男だし。」
「でも、綺麗なものに変わりはないし。」
僕がそう言うと、泣きそうな顔でキミは言ってきた。
「僕は…あの時、逃げたのに、また同じこと言ってくる…。どうして?」
「どうして、って…。」
「嫌なヤツだと思わなかったの?」
「全然。なんで僕がキミを嫌なヤツだって思わなくちゃいけない?」
「今、言ったでしょ?僕はあの時、逃げたんだよ?また、とか言いながら、一度も此処に来なかったし。」
そうか…。
一度も来なかったら、会えるはずなんてないな。
行き違っていたわけでも、キミが消えちゃったわけでもなかった。
「でも、今年はこうしてちゃんと来て、また出会えたじゃん。」
僕がそう言うと、キミの瞳がゆらゆら揺れだした。
「僕が逃げた理由を知ったら…たぶん…今度は君が逃げるよ。」
「そんなことないと思うけどな。」
なのに、キミは俯いて首を横に振った。
だから…
「あの時、言えなかった事、言ってもいい?」
って僕から切り出した。
キミはおずおずと、
「…なに?」
と言った。
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