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僕の心配をよそに、花びらの行方だけを追う。
また、同じことを繰り返すと、じっと動かずに見ていた僕に、今度はようやく気づいた。
『ど、どうしよう。……と、とりあえず、笑っておこう。』
なんとか微笑んでるようには見えたと思うけど。
遠くからだったが、少し恥ずかしそうに会釈をしたのが分かった。
なんか、話をしてみたくなって、僕はようやく歩き出した。
「ひとりですか?」
そう声をかけると、
「はい。」
と答えた。
『ひとりですか?』って…。まるでナンパじゃんか…。
もっと違うこと言えよ!もう!
「桜、好きなんですか?なんか、さっきからずっと桜を見上げてたから…。」
「え?い…いつから見てたんですか?」
「いつからだろう?…よくわかんないけど。」
「見られてたのか…。」
「なんか…綺麗でしたよ。」
あっ…。つい本音を言っちゃった。引いたりしないかな…。
「桜…綺麗ですよね。」
「僕が言ったのは、桜もですけど、あなたも綺麗でした。」
自分でもビックリするくらいな、三流ドラマの台詞みたいな言葉が口から出てきた。
「いや…綺麗とか…。僕は男だし。」
やっぱり男だった。
どこかで違ってることを期待してたけど、どっからどう見ても男だよな。
「でも、綺麗なものには変わりないし…。」
って言ったら、頬をまさに桜色に染めて少し俯いていた。
その姿にまたドキッとした。
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