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「僕、今、20歳で、もうすぐ21歳なんですけど、いくつです?」
「僕は、19歳です。僕ももうすぐ20歳です。年も近いですね。」
「1コ違いか。同い年で全く会ったことが無かったら、あり得ないところだったな。」
「そうですね。クスッ。」
ふわりと笑った笑顔もとても魅力的だった。
どうしよう…。
僕はこの人にどんどん惹かれていく。
「あの…僕の顔になんかついてますか?」
そう、この人に言われるまで、じっと見つめていたことに気づかなかった。
「あ…いや…なにも。」
僕は視線の置き場所に困って桜を見上げた。
染井吉野の桜の淡いピンクと隙間から見える水色の空のコントラストがとても綺麗だった。
「……綺麗だ…。」
「綺麗でしょ?」
「うん。」
冬、雪が降る空を見上げると、自分がどんどん空に上っていくような感覚になるけど、桜の花びらがはらはらと舞い散るのを見上げるとまた同じような感覚になった。
ずっと見続けていたせいなのか、次第に水色の空さえも少しピンクがかって見えてくるような気がしてきた。
目がおかしくなりそうで、視線を空から正面に戻すと、そこにしっかりと立っているはずの人が消えていくような錯覚を起こした。
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