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せっかく出会ったのに、消えないで!
そう思ったら、即、行動に出ていた。
目の前の、今日出会ったばかりの人を、しかも男を抱きしめていた。
「ちょっ、ちょっと!なにしてるんですか!」
言われてハッとして飛び退いた。
「あっ!ご、ごめんなさい!僕、どうしちゃったんだろう。ホントにごめんなさい!」
自分でもビックリして、平謝りした。
「なんですか?いきなり。」
目を見開き、頬を赤く染めて、本当に驚いた顔をしていた。
「ホントにごめんなさい!パッと見たら……なんか…消えそうだったから、つい…。消えて欲しくなくて…思わず捕まえちゃってました。」
抱きしめたのではなく、捕まえたんだと、そう言い訳した。
「プッ。幽霊じゃあるまいし。僕はちゃんと実体がありますけど?」
と言って可笑しそうに吹き出した。
ふざけんな!変態!って殴られても仕方ないのに、その人は笑ってた。
「いや、幽霊じゃなくて…」
天使、って言おうとしてやめた。ますます変なヤツだと思われるのがオチだから。
「幽霊じゃなくて、なに?」
「いや、なんでもないです。」
「変な人だ。」
って笑ってた。
つられて僕まで笑った。
「そんなふうに捕まえられたのは初めてです。クスッ。」
「僕も…こんなふうに捕まえちゃったのは初めてです。マジで謝ります。」
「そんなに謝らなくても大丈夫ですって。」
「ホントに大丈夫?」
「うん。」
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