『     』

4/9

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
召使は緑の国へと向かった。 自分の行動が本当に合っているのか、そんなことも分からないまま。 しかし、召使は小さい頃からずっと守ってきていることがある。 『君を守る、その為ならば僕は悪にだってなってやる。』 召使にとっては王女が全てなのだ。 一緒にこの世に生まれてきた…とても可愛い…召使の姉… ―――――――――――― 緑の国へ着いた召使は真っ先にお城へと向かった。 緑のあの娘が王女となっているお城へ…… 兵士達の目を盗みながら、王女の部屋へと近付く。 一歩…また一歩… 緑の女の死の音が近付いてゆく。 ガチャ… 召使がドアを開けると、そこには不思議そうな顔をした緑の王女がいた。 「……? あなた…」 次の瞬間、部屋にズシュッと言う醜い音が響いた。 ドサッ その部屋には赤く染まった緑の王女の横たわっている姿が。 そして、その横で泣く一人の召使の姿が。 召使の目から涙が止まらない。 どうしてなのかも分からない。 涙は止まることを知らず、どんどん溢れ出ていく。 ―――――――――――― 涙が自然に止まったあと、召使は緑の王女の手の甲にキスを交わし、リン王女の国へと帰ってきた。 「ただいま帰りました。」 「………」 「王女の命令、執行いたしました。」 「………」 「…王女?」 「あら、おやつの時間だわ。」 「…今日のおやつはブリオッシュですよ。」 召使がそう言うと、民衆の誰もが見たこともないような無邪気な笑顔を召使に向けた。  
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加