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「…………」
その時、黄色の召使がそっと王女の手を取り、王間から抜け出した。
「ちょっ……」
何かを言おうとした王女の口を手で塞ぎ、召使は走ってどこかへと向かう。
そして、着いた場所は着替え室だった。
「リン王女…いいや、リン。
……ほら、僕の服を貸してあげる。」
そう言い、召使…あの哀れな双子の弟のレンはスペアの召使用の服を差し出した。
「…………え…?」
「これを着てすぐお逃げなさい。」
「ちょっ…ちょっと待って……
一体なんのつもりなの!?」
「僕が王女、君が召使になるんだ。 囮になるから。
ほら、早く着替えるんだ。」
「ま、待って!
そんなのバレるに決まって…」
「大丈夫。
僕らは双子だよ。
きっと誰にも分からない。」
これを聞いた王女は言葉を失った。
昔の記憶が溢れ返ってくる。
双子…そう、王女にはこの世に一緒に生まれてきた弟が…
「レン…………?」
「早く着替えるんだ。」
「着替えたら…どうするつもり……?」
「大丈夫、なんとかするから。
君は王女なんだ。君は僕が守る。
たとえ世界の全てが君の敵になろうとも…」
「…っ……レン……!!」
「よし、着替えたね。
じゃあ今すぐこのマントを被って、ここから出るんだ。
まだ回りには住人がいるだろうからこれで身を隠して。」
「…レン…レン…!!」
「…大丈夫。
双子だからバレないよ。」
「そうじゃ…なくて…」
王女はたくさんの涙をこぼしながら、レンの名前を呼び続けた。
「…じゃあ…またね。」
王女が着ていた服に着替えたレンはリンに別れを告げ、最後におでこにキスをして走っていった。
「レン…っ!!!
待って!レーーーンっ!!!」
王女の命令に振り向こうとはしない召使。
双子の片割れを守る為、召使は王間へと向かった。
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