一章

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「…ッ!!」 夢から覚めて、僕は、椅子を蹴り倒してしまいそうな勢いで立ち上がり周りを見渡した。 だけど、そこには異形のの化物も、姉さんもおらず、ただ通い慣れた学校の教室の風景が広がっていた。 「あれは…夢?……むむむ……でも、あんな光景…見たこと…ない」 僕は、そう呟くと少しずつ夢の内容を思い出し始めた。 でも、どれだけ夢の内容を思い出して見ても、会話の内容や、その夢で見た場所すら、僕の記憶には全くと言っていいほど残っていなかった。 さらに深く夢の内容を思い出そうとしたとき、チャイムの音が学校中に響いた。 「ぬぬぬ…、もう…下校時間になっちゃう……早く…帰らなきゃ」 僕は、机に引っ掻けてあった鞄を手に持つと、昇降口に向けて小走りで向かった。 それから、昇降口に向かう時も、靴を履き替え校門へ向かうときも、僕はずっと、あの夢について考えていた。 「あの夢が……記憶の…整理の…夢じゃ…無いなら……僕の…妄想?」 僕は、小さく頭を振り、 「それは……無い」 と、結論付けて、いつの間にか止めていた足を動かし始めた。
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