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あれは真夏のこと
僕達は木陰で授業をサボっていた
『なんでお前までサボるんだよ…』
『僕がたまたま、たまたまサボろうとしたら進がいたんだよ』
『普通サボるなら屋上とかだろ』
『そーいう進はなんでいるのさ』
『ここは俺のお気に入りの場所なんだよ』
『ふーん……で?』
『お前な………』
サアアアア………
涼しい風が心地よく木葉を揺らす
『ここ、いい場所だね。進にしてはセンスいいじゃん』
『だろ?ここに来ると嫌な事があっても忘れられるんだ』
ニカッと白い歯をみせながら笑う進
『…進ってさ、卑怯だよね。』
『は!?俺なんもしてねーじゃん!』
(不意打ち……)
ポーカーフェイスを保っているけど、心臓はばくばく鳴っている。
『なあ…お前、なんで俺と話してくれんだよ』
『…』
お互いに顔を見合わせず、空を見上げる。
『別に…なんか話したら意外と普通の人だったし。』
『…そんなに俺の噂、酷いのか?』
『なんか中学校で沢山の人を意味もなく殴ったとかね』
『…』
サアア………
緑が揺れ
今は授業中な為、教師の声がちらほら聞こえてくる
『でも』
青い空はいつも通り白を遊ばせて存在している『今の僕は「進」を信じてるから、そんなの無いものと考えてるよ』
『え…』
鳥は翼を風に任せ、羽ばたく
『人間て本当に馬鹿な生物だよ……こんなもの、僕は大嫌い』
空から目をそらし、自分の手の平を見る
『最初は暖かいものも、いつかは冷める……結局、世界はそんな風になってるんだよ』
そう。
僕の存在は小さくて、誰にも愛されずに消えるんだ
『進。』
『っ!?な、何だ』
いつもの翠とは正反対の冷酷な表情にびくりとする
『花はいつか散り、地面に堕ちていくんだ。
他の花びらにも会えない……
だから、それまでの努力は全て無となるよ…
やめときな。』
『な……なに、を…』
『それは自分が一番にわかってるでしょ…さ、行こ。次の授業が始まる』
そうだ。
どうせばらばらに散っていくんだったら、何もせずに枯れたほうが…
『でも…さ』
『元は一枚の花だったんだから、またいつか…
つぼみから新しい花に生まれ変われるんじゃねぇの…?』
『え…』
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