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その朝は、いつもと変わらない朝だった。
悪夢でうなされて目が覚めたことを除けば。
どんな夢だったのか、はたまたそれが本当に悪夢であったのかすら、定かではないけれど
目覚めた直後は恐ろしくて堪らない気持ちがしたので、さぞ酷い夢だったに違いない。
どんな衝撃的な夢で、後で誰かに話そうなどと考えていても、しばらくすればその内容も煙のように消えてしまい、なんとなく凄かった、という感慨がわずかに残るのみである。
夢とは、得てしてその様なものだ。
そんなことを思いながら、ぼんやりと枕元の時計を見ると、ちょうど短針が六時を指す所だった。
いつもより三十分も早い目覚めである。
かといって先程の言いようもない恐怖を思い出すと、どうしてももう一度寝ようという気にはならなかった。
仕方なくベッドから抜け出し、リビングへと向かう。
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