始まりの前

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「…ずっと一緒にいれたらいいね。」  千早はすこし恥ずかしそうに、僕の耳元でそう囁いた。  僕らは初めて一緒に過ごすクリスマスイヴの最後に、ここらで一番大きなイルミネーションを観にきていた。  ニュースでは暖冬だと言っていたが、とてもそうとは思えない、しんしんと雪が降るクリスマスだった。  運河沿いに建つ、大きなショッピングモールの入り口のツリーと、そこから連なる街路樹に飾られたイルミネーションは、テレビで取り上げられた影響か、たくさんのカップルが見にきていた。 オレンジの光がいくつも重なり、チラチラと点滅する様は、降り続く粉雪と相まって、とても幻想的な雰囲気になっている。 僕の手をギュッと握りしめる千早の手の暖かさだけが、この世で唯一の熱のように、確かな繋がりを僕に伝えてきた。
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