記憶の欠片

第2章 雨

「いや…花菻？その人は、何か言ってたか？」

充は首を傾げたまま―少々気持ち悪い―花菻に聞く。

「え？当たり前じゃない。えっと確か…「雨が降るわよ」」
「「あ？」」

花菻の言葉に被せるように、僕のすぐ近く――つまり庭から声が聞こえた。

それが予兆だった。
穏やかに流れるはずの田舎の時間が、あの時のように、突如崩れるとは、僕も充も妹も、いや“人”は考えなかった――