第3章 記憶

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30分程前にポツポツと降り出した雨は、今や庭の先が見えない量となっていた。 しかし、雨の騒がしさとは逆に僕は―いや僕たちは30分程前から、静寂を保っていた。 ――こんなに喋らなかったことは、初めてじゃないか。 原因は分かっている。 突然現れた―と言うと語弊があるかもしれないが、気配がなかったため強ち間違っていない―1人の女性のおかげだ。 彼女はただ美しい顔に、微笑を浮かべて僕たちを眺めていた。 ゴロゴロ… 「あ…雷」 あれ程誰も話そうとしなかった30分は、遠くで鳴り始めた雷によって破られた。
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