第3章 記憶

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「しまった…」 ふと外を見た僕は、嫌なことを思い出した。 「どうした?」 僕の呟きを拾ったのは充だった。 「いや、大したことではないけど…。財布を車に置きっぱなしにしてるなと」 この雨の中、目と鼻の先にある車に行くのは随分難しいことのように思えた。 「心配いらないわ。誰も盗れやしないわよ」 僕の困惑に答えたのは、意外にも一言も話さなかった女性。 「あ…そう…ですか。盗れやしないんですか」 壊れかけのラジオ―別に歌のタイトルなんかではなく―のように、喋ってしまい少し恥ずかしくなる。
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